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変形性股関節症・膝関節症の治療方針

当院では変形性膝・股関節症の患者さんに、新しいリハビリ治療(PSTRエクササイズ:ゆうきプログラム)を導入し、本当に手術が必要な状態かどうかを適切に判断し、可能な場合は手術の回避・延期を目指した治療を行っています。

手術が必要な場合でも、筋肉を全く切らない人工関節手術(MIS人工膝・股関節置換術)を行います。
福岡和白病院関節症センターと浅間総合病院整形外科で、合同の臨床研究を開始しました。

新着情報

目次

1.はじめに

以前より、当院整形外科での変形性膝・股関節症に対する治療方針の特徴は、「積極的に保存治療(手術以外の治療法)を行い、できるだけ手術せずに患者さんの痛みや機能を改善させることを目指す」ということでした。
その中でもリハビリテーションは非常に重要な役割を果たしており、手術が必要と言われて当院を初めて受診された方であっても、当院のリハビリに通って治療を行い、症状が改善して手術を回避・延期できた方々もいらっしゃいました。
しかし、リハビリ通院を続けたくても、仕事や子育て、介護などでなかなか時間を作ることができず、治療が思うように行かない方もいらっしゃいました。

そこで2016年より、「自宅で、自分で行うことのできる治療法」としてゆうき指圧大谷内輝夫院長により開発されたホームエクササイズ(PSTRエクササイズ:ゆうきプログラム)を導入したところ、通院回数が少なくても痛み・関節機能を改善させ、ホームエクササイズを継続することで手術の回避・延期が実現できている患者さんが増えました。

この治療法はゆうき指圧だけでなく、福岡和白病院関節症センター(林 和生センター長)においても約10年間の治療実績があります。
その治療経験を分析した結果、変形性膝・股関節症の痛みの原因は「関節面からの痛み」の場合と「関節外の軟部組織(主に靭帯)からの痛み」の場合があり、「関節外の軟部組織(主に靭帯)からの痛み」の多くは「PSTRエクササイズ」で症状が改善する、ということがわかってきました。
この臨床成績は林センター長らがOARSI 2015(世界変形性関節症会議2015.4.30〜5.3、米国・シアトル)や第43回日本股関節学会(2016.11.5、大阪)などで発表されています。
「関節面からの痛み」の場合や「関節外の軟部組織からの痛み」でも長期間放置され可動域制限が強い場合は「PSTRエクササイズ」を行っても症状が十分改善せず、手術の対象になることが多いですが、その場合でも術前に「PSTRエクササイズ」を行い、「筋肉を全く切らない人工関節手術」を行うことで、術後の早期回復・社会復帰が期待できます。

またこの治療法を応用して、初診時に手術が本当に必要か、それとも回避・延期が可能かを判断することができるようになり(PSTRテスト)、今まで明確なものがなかった手術適応の判断基準が明らかになるのではないかと考えております。
このホームページでは、新しいリハビリ治療「PSTRエクササイズ:ゆうきプログラム」と「筋肉を全く切らない人工関節手術」を中心に、当院における変形性膝・股関節症の治療方針を紹介させていただきます。

担当医師プロフィール

佐久市立国保浅間総合病院 診療部長(兼)整形外科部長

角田俊治(つのだ としはる)
学歴
千葉大学医学部卒業
資格
日本整形外科学会専門医
所属学会
日本整形外科学会/日本股関節学会/日本人工関節学会

2.変形性股関節症とは?

変形性股関節症とは股関節に起こる変形性関節症です。
変形性関節症とは、関節の軟骨がすり減り、それを修復しようとして、骨の形状が変化し、骨棘という増殖した骨が形成されたりして、関節の変形が進み、炎症を起こして、関節が腫れたり、関節内に水が溜まったりする病気です。
関節の変形は、全身のどの関節にも発生し、加齢とともに発生頻度は増加しますが、体重がかかる股関節は発症しやすい関節の一つです。

痛みはどこからくるのでしょうか?

図1:正常股関節
股関節の痛みを感じる部位

  • 関節包・骨を覆う骨膜に痛みを感じる神経が抱負に分布しています。
    軟骨のすぐ下の骨にも神経が分布しています。
  • 軟骨には、痛みを感じる神経は分布していません。
この神経の分布してない軟骨が磨り減って神経の豊富な骨が接触し合うことにより痛みを生じます。

変形性股関節症の原因と進展

図2:変形性股関節症の進展
最も多いのは先天性股関節脱臼や股関節の屋根部分(臼蓋:図1の寛骨臼に相当)のかぶりが不十分な臼蓋形成不全が長年放置された後に痛みが出現する二次性の変形性股関節症です(図2)。図のように体重を支える面積が正常よりも狭いために時間の経過とともに軟骨(関節のすきま)が磨り減っていきます。
この進行とともに痛みの程度が増していきます。
痛みが出現する年齢は、多くは中高年で発症しますが股関節脱臼や臼蓋形成不全の程度により10歳代・20歳代で出現する場合もあります。
同じように股関節痛を生じるものに解剖学的異常(臼蓋形成不全は、ない)はないにもかかわらず股関節のクッションの役割を果たしている軟骨が磨り減っていく一次性のものがあります。
これには肥満や先天性の軟骨異常が原因のことがあります。
先天性股関節脱臼・臼蓋形成不全が女性に多いので結果的には股関節痛は女性の患者さんに多い特徴があります。

このため変形性股関節症の早期の時期には痛みが軽く治療が遅れる原因になります。
早期発見・早期治療に股関節症状/チェック表をご利用ください!

股関節症 チェック表

  乳幼児期に脱臼と診断されたことがある。
  歩くとき体が左右に揺れ、膝が重い。
  運動した後お尻や膝が痛い。
  靴下がはきにくい。
  段差を上下するのが難しい。
  歩くたびに股関節が痛い。
  立ち上がりで股関節が痛い。
  足を横に広げにくい。
上記項目の内、二つ以上該当すれば専門医の受診を勧めます。

変形性股関節症が進んでくると軟骨がなくなり神経豊富な関節包や骨膜さらに軟骨の下層の骨に炎症が及んでいき強い痛みが生じるようになります。
前期では痛みがどこからくるかが問題になりますが、関節唇(線維性軟骨)が断裂することにより痛みが生じるようになります(図1の関節唇)。

治療法、保存的療法

残念ながら、摩耗(まもう)した軟骨や変形した関節を元通りに再生する治療法はなく、痛みや症状を和らげ、機能を回復させるのが治療の目的になります。
治療法は保存治療と手術治療の2つに大きく分かれます。保存治療とは手術以外の治療法をすべて指します。
保存療法には、日常生活指導、運動療法、温熱療法、薬物療法、装具療法などがあります。手術治療には、主に骨切り術と人工股関節置換術があります。
現在の標準的な考え方は、まずは保存治療を行って、痛みが良くならなければ手術を行うというものです。
福岡和白病院では10年前から従来にない新しいリハビリ治療(PSTRエクササイズ:ゆうきプログラム)に取り組んだ結果、1年間エクササイズに取り組まれた患者さんのうち約80%の方に治療効果があり、手術療法と同じくらいに症状が改善するという結果が得られました。
浅間総合病院でも2016年より同じ治療法を導入しています。
この方法は従来の方法と異なり、骨盤のゆがみを矯正(きょうせい)し、硬くなった股関節を緩めるための体操を毎日自宅で続けることで、股関節の痛みを軽くさせることを目的としています。

腰痛と股関節痛の関係(股関節の変形を考慮した運動訓練)

図5:変形性股関節症の変形パターン
股関節が変形して硬くなって伸展できなくなると代償性に腰椎を前弯させることでバランスを取るようになります。
腰椎すべり、腰部脊柱管狭窄症による腰痛や下肢のしびれがでると腰椎の治療だけでなく原因である股関節の伸展制限を矯正する治療を併用しなければなりません。



「8の字ゆらし」による十分な柔軟体操の後に、筋力増強訓練を行なうことが重要です。

手術のタイミングは?

変形性股関節症が進行していくと腰椎に影響を及ぼし腰痛が出現・増悪していくことがあります。
腰痛が強くなったらたとえ手術で股関節の痛みが軽くなっても残った腰痛のために歩行障害は改善されないときがあります。
この場合は、3月間の術前リハビリの後、早急に手術することを勧めます。
  • 腰痛が出現し始めの軽いときは、手術により股関節痛が軽快すると同時に腰痛も軽快することが多いです。
PSTRエクササイズ(ゆうきプログラム)を基にした歩行バランス法によりどうしても改善しない場合、腰痛のでる前に股関節の手術を受けるのが最もよいタイミングです!

3.変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症とは膝関節に起こる変形性関節症です。
変形性関節症とは、関節の軟骨がすり減り、それを修復しようとして、骨の形状が変化し、骨棘という増殖した骨が形成されたりして、関節の変形が進み、炎症を起こして、関節が腫れたり、関節内に水が貯まったりする病気です。
関節の変形は、全身のどの関節にも発生し、加齢とともに発生頻度は増加しますが、体重がかかる股関節は発症しやすい関節の一つです。
原因は関節軟骨の老化によることが多く、肥満や素因(遺伝子)も関与しています。
また骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することがあります。
加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使い過ぎによりすり減り、関節が変形します。

膝関節痛の原因

図1:膝関節
関節の中では、骨の表面はなめらかな軟骨(なんこつ)でおおわれ、そのすき間には半月板(はんげつばん)があります。
関節部分は関節包(かんせつほう)でおおわれています。
その内側の滑膜(かつまく)は潤滑油の役割をする関節液(かんせつえき)を分泌します。
軟骨、半月板、そして関節液のはたらきによって、膝(ひざ)関節は非常になめらかに動くようになっています。

痛みはどこからくるのでしょうか?

  • 膝関節の痛みを感じる部位
  • 関節包・骨を覆う骨膜に痛みを感じる神経が抱負に分布しています。
    軟骨のすぐ下の骨にも神経が分布しています。
  • 軟骨には、痛みを感じる神経は分布していません。
変形性膝関節症では、軟骨が磨り減っていき痛みを感じる骨や関節包が刺激されて痛みを生じるようになります!
しかし、軟骨には神経が分布していないために早期の時期には痛みが軽く治療が遅れる原因になります。

変形性膝関節症の進み方と症状

一次性変形性膝関節症:関節軟骨の退行変化(加齢)に起因する。
二次性変形性膝関節症:外傷や関節リウマチなど様々な疾患に続発するもの。
  • ほとんどが、一次性で、内反型(O脚)が多く、女性に多い。
    早期発見・早期治療に膝関節症状/チェック表をご利用ください!

膝関節症 チェック表

  たちあがり・歩きはじめに膝がこわばる。
  坂道・階段の上り下りで違和感がある。
  膝に手をあてて屈伸するとゴリゴリ感じる。(曲げたときのポキッという音は関係ない)
  トイレでのしゃがみ・正座・中腰がツライ。
  膝の後ろに張りを感じる。
  膝の前や後ろが腫れて熱を持つ。
  膝のお皿を押すと浮いた感じがする。
上記項目の内、二つ以上該当すれば専門医の受診を勧めます。

治療法、保存的療法

残念ながら、摩耗(まもう)した軟骨や変形した関節を元通りに再生する治療法はなく、痛みや症状を和らげ、機能を回復させるのが治療の目的になります。
治療法は保存治療と手術治療の2つに大きく分かれます。
保存治療とは手術以外の治療法をすべて指します。
保存療法には、日常生活指導、運動療法、温熱療法、薬物療法、装具療法などがあります。手術治療には、主に骨切り術と人工股関節置換術があります。
現在の標準的な考え方は、まずは保存治療を行って、痛みが良くならなければ手術を行うというものです。
当院でもまずは保存的に痛みを取る方法を行います。
従来の運動療法や関節内注射だけでなく、ホームエクササイズを中心としたPSTRエクササイズ(ゆうきプログラム)の指導も積極的に行っており、できるだけ手術の延期または回避を目指します。
保存治療を行っても症状が改善しない場合には、筋肉を切らない人工関節手術を行います。

手術のタイミングは?

変形性膝関節症が進行していくと保存治療を行っても症状が改善せず、日常生活や仕事などに支障をきたすようになります。
また、腰椎に影響を及ぼし腰痛が出現・増悪していくこともあります。
このような場合には、人工膝関節置換術を行います。
当院では手術前にもPSTRエクササイズ(ゆうきプログラム)を行い、手術後の早期機能回復・社会復帰を目指しています。

4.筋肉を切らない人工関節手術について

人工関節置換術は、変形性関節症や関節リウマチなどの疾患やケガなどによって変形した関節を金属やセラミック、ポリエチレンなどでできた人工関節に置き換える手術です。
他の治療法と比較すると短期間で痛みや歩行能力の改善が可能になる、切れ味の良い治療法です。
手術件数は年々増加傾向にあり、2013年には国内で13万件以上の手術が行われています。
その約96%が股関節と膝関節の人工関節です。

人工関節置換術が必要になる原因は?

ほとんどが変形性関節症という関節の疾患です。
変形性関節症は、車のタイヤが走行距離に応じてすり減っていくのと同じように、関節の軟骨が長い時間をかけて少しずつすり減り、骨が変形します。
関節の変形は全身のどの関節にも発生しますが、特に体重がかかって酷使されやすい股関節や膝関節に発症しやすい傾向にあります。
70歳以上の女性の70%が変形性膝関節症を発症しているという報告もあります。
その他には関節リウマチや骨壊死症があります。
関節リウマチは身体を守る役割をしている免疫細胞が自分の関節を間違えて外敵と認識して攻撃してしまう病気で、全身の関節軟骨が破壊されるために体を動かすと激痛が生じます。
骨壊死症は関節の体重がかかる部分の骨が血流の低下により壊死(骨組織が死んだ状態)に陥った状態です。
骨壊死に陥った部分が潰れることにより、痛みが出現します。

人工関節置換術を行うタイミング

股関節や膝関節の痛みに対する第一の治療が人工関節ではありません。
外傷や著しい関節破壊など緊急性のある場合を除いて、まずは手術以外の治療(保存治療)を行います。
保存治療をとことんやってみて、それでも痛みが取れない場合に、人工関節に入れ換える手術を考えます。
人工関節の手術は患者さんにとって最終手段ですので、万全を期して行いますが、後に述べる合併症が起こる可能性もあります。
じっくり考えて手術をするか決めてもらいます。
患者さんが手術をすると覚悟を決めたからには、私たち整形外科医は最善を尽くします。
以前は傷が大きく、関節周囲の筋肉を切離して手術を行っていましたが、近年の医療技術と材料の進歩によって、筋肉を切らない人工関節置換術が可能となり、術後回復が早く、早期退院、早期社会復帰が期待できるようになりました。当院では、人工股関節全置換術には仰臥位前方手術(Direct Anterior Approach:DAA)、人工膝関節全置換術には大腿四頭筋温存手術(Under Vastus Approach:UVA)を導入しており、多くの患者さんが手術翌日から立って歩く練習を始めています。

人工関節の良い点・悪い点

人工関節置換術をして良い点は、痛みがなくなることです。
歩き始めや立ち上がる動作、階段の昇り降りが楽になります。
必ずしも完全に痛みがゼロになるとは限りませんが、手術前の激痛と比べたらほとんど痛くないと言われる方が多いです。
逆に悪い点は、感染や血栓症などの合併症を起こす可能性があることと、将来人工関節が弛む可能性があることです。
合併症の発生率は統計によると感染は約1~2%、重症な血栓症である肺血栓塞栓症は約1%です。
人工関節は、材料の進歩によって今では20年以上持つだろうと言われていますが、弛んできた場合は再置換術が必要なこともあります。
手術を受けられたら、経過が順調でも年1回程度は医師の診察をうけることをお勧めします。

人工関節置換術の実績(2016年度)

人工股関節
59件
人工膝関節
57件

5.受診案内

整形外科の外来診療は、初診・再診共に完全予約制です。
平日13:00~16:30に電話で予約を受付けています。
※整形外来窓口での予約業務は行っておりません。

予約について

1.診察券を準備

当院を受診されたことがない(患者番号がない場合)は、電話予約の際にその旨をお伝えください。

2.浅間総合病院へ電話

浅間病院電話番号:0267-67-2295
はじめに、整形外科予約についてとお伝えください。
予約担当スタッフにつながりましたら、
「患者番号」と「股関節(または膝関節)ついての診察予約希望」であることをお伝えください。
他院からの診療情報提供書(紹介状)や画像(フィルムまたはCD-Rデータ)をお持ちの方は、電話予約の際にお伝えいただき、受診当日にご持参ください。

診療体制





予約初診
予約初診
予約初診
初診なし
予約初診
村島
角田
伊藤
角田
坂井
戸澤
有吉
坂井
有吉
喜多岡

喜多岡

戸澤
  • 予約当日は、玄関受付機での受付が必要です。
  • 外来状況、救急対応等のため、予約時間にお呼びできない場合もあります。